みなさんこんにちは、中今〇ノ丞です。
最後の宮大工と言われた「西岡常一」さんの12回目になります。
御著書「木に学べ」から、素晴らしい名言をご紹介いたします。
(出典:「木に学べ」)
(法隆寺)
木を知るには土を知れ
「自然の木と、人間に植えられて、だいじに育てられた木では、当然で
すが違うんでっせ。
自然に育った木ゆうのは強いでっせ。なぜかゆうたらですな、木から実が
落ちますな。それがすぐに芽出しませんのや。出さないんでなくて、出せ
ないんですな。ヒノキ林みたいなところは、地面までほとんど日が届かん
ですわな。
こうして種は何百年もがまんしておりますのや。それが時期がきて、林が
切り開かれるか、周囲の木が倒れるかしてスキ間ができるといっせいに
芽出すんですな。
今年の種も去年の種も百年前のものも、いっせいにですわ。
少しでも早く大きくならな負けですわ。木は日に当たって、合成して栄養
つくって大きくなるんですから、速く大きくならんと、となりのやつの
日陰になってしまう。日陰になったらおしまいですわ。
何百年もの間の種が競争するんでっせ。それで勝ち抜くんですから、生き
残ったやつは強い木ですわ。でも競争はそれだけやないですよ。
大きくなると、少し離れてたとなりのやつが競争相手になりますし、風や
雪や雨やえらいこってすわ。ここは雪がふるからいややゆうて、木は逃げ
ませんからな。
じっとがまんして、がまん強いやつが勝ち残るんです。
千年たった木は千年以上の競争に勝ち抜いた気です。法隆寺や薬師寺の
千三百年以上前の木は、そんな競争を勝ち抜いた気なんですな。
いちがいには言えませんけど、50mの木の高さやったら、50m下まで
根が入り込んでるといわれています。枝が幹から10m横にのびたら、
根も横に10m根を張ってるといわれます」
〇ノ丞解説:自然の木も日々生き残るために競争し続けている、という
お話しは、初めて知ったのでとても驚きですし、とても含蓄のあるもので
個人的に気に入っております。
一見すると何にも感じませんが、自然のそこは動物や他の生物と同じで、
木々たちの中でも厳しい生存競争が繰り広げられているわけです。
人間の世界も同じように、みな生きていくためにつらい競争があることは
ご存知の通り。
ただ自然は声を出しませんが、そこから学ぶべきものがあることを西岡棟梁
から今回改めて教えてもらいました。
その千三百年の樹齢の木が、法隆寺の材料となってさらに千三百年持ち
続ける。
そんな大木はまさに神さまそのものですよね。
宮大工として解体修理を通して法隆寺を知り尽し、樹齢千年二千年のヒノキの
性質を知り尽し、また聞くことができないのに聖徳太子の願いも汲み取って
おられた西岡棟梁。
法隆寺の解体修理の中でヒノキの声なき声を聞き、聖徳太子の法隆寺建立の
切なる願いも、心で感じ取っておられた。
そう、現代から飛鳥の時代へ、法隆寺が建立されていた当時の時代の飛鳥の工人
たちや、 聖徳太子と意思疎通し、対話されていた方だと言えましょう。
そんな尊いお仕事をされていた西岡棟梁は、ただ単に宮大工という立場を
越えて、今でも私たちに気づきを与え続けておられる存在です。